患者さんは60代の男性。
昨年の初めに診断された血液のがん。
ず~っと頑張って闘病してこられて、奥さんも患者さんをしっかりと支えてこられました。
自宅のお庭のお花を見るのが何よりのお見舞いだそうで、症状がきつくても
奥さんがそばにいて下さる自宅で過ごされていました。
自宅で本当に辛くなるまで頑張られて、いよいよしんどくなって入院されました。
入院してわずか3日。あっという間に息を引き取られました。
その看護をしてくれたのは新しく病棟にやってこられた看護師さん。
彼女は一生懸命看護をしてくれていました。
患者さんが葬儀屋さんの車に乗せられてお帰りになりました。
ふと眼をあげると、その看護師さんが目を真っ赤にして涙をぽろぽろこぼしています。
私が研修医一年目のことです。白血病で闘病されていた患者さんを担当していました。
彼は離島の人で、お見舞いに来てくれる人もありませんでした。
看護学生さんが付いてくれると、いろいろとお話をして表情が明るくなりました。
きっと心細くて、さみしくて、不安でたまらなかったのでしょう。
若かった研修医かいけママ(まだママではなかったけど)、一生懸命診療していました。
とうとう患者さんが亡くなられて、看護師さんとお見送りをした時に、
涙がボロボロ出ました。隣を見ると病棟婦長さんも一緒に泣いていました。
その患者さんのことは、折に触れて今も思い出します。
重い病状。孤独な闘病。若くて使命と希望に燃えていた自分。
今日の看護師さんの涙は、そんな医師としての自分の原点を思い出させてくれました。
ありがとう。きっといい看護師さんに成長することでしょう。
そして、患者さんと奥さまには、お疲れさま、と。
合掌。
われわれが診療しているのは、基本的には再発進行がんの患者さん。
で、治療を一生懸命しても、効かないこともある。
まずガイドラインにのっとって治療して、それでもだめな時には、
いろんな先生に相談して、いろんな文献を調べて、いろんな情報を集めて、
実際患者さんにもセカンドオピニオンを勧めたり、とにかく手を尽くして治療する。
ところが、「外野」。この人たちにはほとほと困る。
知識なし。協力なし。責任感なし。覚悟なし。口だけ出す。
で、患者さんは、この外野の勝手な言葉に振り回される。
昨日書いた「代替療法」を勧めて、高いキノコやら海藻を買わせてみたり、
怪しい医療をしている病院を紹介してみたり。。。
だからって、もちろん責任など取ったりしない。
せっかく信頼関係をこつこつ築いてきたのに。
せっかくいろんな人にいろんなことをお願いして、労力を使って、時間も割いて、
少しでもいい治療をと思って提案しているのに。
心ない外野の無責任な「助言」で、患者さんの「わらをもすがりたい気持ち」がぐらつく。
意見するなら、患者さんと一緒に説明を聞きに来て、真正面から話をしてほしい。
でも、そういう人は忙しいとか遠いとか言って直接面談しに来たりはしない。
自分が、患者さんの命から可能性を奪っていることが分かっているんだろうか…
こんなことしょっちゅうだと上司は言うけど、そのたびがっくりくると慰められたけど、
やっぱりむなしい。一生懸命やっている医師のモチベーションを下げることに、
自分の抱く幻想を押し付けている外野の人たちは、かなり貢献しているのかもしれない。
彼らが、患者さんの可能性だけでなく、医師の誠実さを、熱意を奪っているのかもしれない。
かいけと同い年のお子さんがいらっしゃる。
驚いたことに今まで手術、全身化学療法、放射線療法、内分泌療法のうち、
ほとんど手術しか受けていらっしゃらない。
いったい何をしていたのだろうかと思い伺ってみると、
代替療法だというのだ。どこかの大学の先生が、
抗がん剤はいけないとかいう本を書いていて、それを信じているとかなんとか…
今回は、具合が悪くて救急外来を受診されたのに、まだ
免疫療法なるものを続けたいとおっしゃる。
免疫療法では、訴訟にもなってるそうです。
患者さんのために、とても悲しくなった。
そして、そんな無責任な医療を提供している医師に怒りを覚えた。
まだまだ小学生にとっては、お母さんが必要だと思う。
世の中の患者さんたちが、間違った情報に導かれて、
病状を進行させて不幸な結果にならないように・・・。
乳がん学会から、患者さん向けのガイドラインの説明の本
乳がん診療ガイドラインの解説
が出ています。代替医療は、グレードD(Aは推奨、Dに向かって推奨度が下がる)
「推奨しない」とはっきり書かれています。どうかご病気のみなさんが
間違った情報をきちんと見分けられますように。
そして、私が担当することになったこの患者さん、何とか軌道を修正して、
少しでもお子さんと過ごす時間が長くとれますように。。。説得、がんばらなきゃ。
すっごい怖かったです。
なんとか無事上陸。目的はこちら。
夕飯は手羽先を頂きました。おいしかったです。
あまりにおなかがすいていたので、写真を撮るより先に食いついてしまいました。。。
なので、写真がありません。あ~、ほんとにおいしかったなぁ。
さて、次の日は、発表までの時間を利用して、お出かけしてきました。
お庭も美しい豊田市美術館。
建物もなかなか芸術的です。
この写真の中にかいけママが映っています。わかるかな?
一番の目的は、この展示室の中に。
じゃじゃ~ん!感動のご対面です。しかも、写真を撮らせてくれるなんて、
なんて太っ腹なんでしょう。豊田市美術館、素晴らしいです。
この絵に会えただけで来たかいがあるってもんです。
帰りは普通の旅客機で、かなり、ホッとしました。
無事到着。たまには学会に行かせてもらえると、とってもリフレッシュします。
子守り当番のかいけパパお疲れ様でした。
あ、誤解のないように。ちゃんと学会発表が最大の目的ですよー!
仕事ですから。仕事。
朝もやの中の内堀通り。
たくさんの人がジョギングする中を久しぶりにスーツを着て講習会場へ。
朝から夕方までみっちり講演を聞きました。
普段は聞けない他科の医師の話は、物事を違った視点で考えるための、
良い勉強になりました。
さて、講演後、楽しみにしていた展覧会に足を延ばしました。
いつ行っても渋谷の人込みには辟易です。
何とか会場に着くと、展覧会はかなりの人気で、
熱心に絵を鑑賞する人々で混雑していました。
背景の書き込みの繊細さ、観察の正確さにはびっくりです。
巧みな心理描写、心憎い演出。なかなか素敵な絵がたくさんで
絵ハガキもたくさん買ってしまいました。
今までたくさん見てきた印象派とは、だいぶ違い興味深かったです。
まだの方、この展覧会も是非!
いろいろな人間模様が見れます。
死の間際に離婚したご夫婦。
患者さんは、署名などできる状態ではなかったが…
借金が離婚の理由のようです。
死の間際に入籍した内縁のご夫婦。
25年連れ添ったと口癖のように言ってました。
一緒のお墓に入りたいというのが理由だそうです。
ご遺体の引き取り手が現れなかった患者さん。
娘も兄も姉もいるのに、誰も引き取りませんでした。
一晩冷蔵庫にとまって、次の日の朝役場の人が来てくれて、
いったい誰が引き取るかでひと騒動。
結局最期までお世話してくれたガールフレンドが喪主になってくれたそうです。
家に連れて帰るのを拒否していた家族。
死の前日にどうしても引き取るといって、バタバタと自宅に帰りました。
後から聞くと、その患者さんも自分の父親を死の直前に自宅に引き取り
自宅で看取ったとのことです。不思議な美学があるものです。
妻とガールフレンドが必ず違う日にお見舞いに来る患者さん。
美しい妻、かわいい子供たち、それなのにガールフレンドも死の直前まで
必要だったのでしょうか…。若くして、お子さんたちを残して旅立たれました。
死が近くなると、その人がどうやって生きてきたか、推測できます。
家族がとっても優しくしてくれるかたは、きっとずっと家族を大切にして来られたんだろうなと思います。
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いつの間にやらかいけは大学生。
全く手がかからなくなり、趣味に邁進中。
ヨガと体作りにすっかりはまりました~
日々マイペースに楽しんでいます♪